◎伝馬舟の櫓をつくる

櫓は日本全国にありますが、漁撈形態や地理的・歴史的背景によって、使われる材や形状が少しずつ異なります。御所浦で使われていた櫓は、概ねウデの幅が狭い九州の櫓型(ナガウデの系統)に入ります。
全国的には櫓を専門につくる櫓大工(櫓屋、櫓匠)がいた地域がありますが、御所浦には櫓大工はおらず、よそから手に入れるか、船大工が櫓もつくっていたようです。
櫓を新造する上で参考としたのは、船大工の松岡さんがつくっていた櫓。近年の天草の船具店で手に入った唯一の櫓です。もともとは松岡さんも、長崎で製造されていた長崎櫓と呼ばれる櫓を手に入れて、それを真似てつくったそうです。
櫓の大きさは、船に合わせます。御所浦の伝馬舟に使う櫓は、ハの長さが10尺、ウデは5尺程。イレコやツクの位置は、長さに合わせ自ずと決まってきます。
平成26年初夏、材が乾燥するのを待って櫓の製作に取りかかります。作り手は、御所浦で平成19年に2隻の木造伝馬舟の新造を手がけた船大工、荒木義夫さん(昭和29年生まれ)。


櫓の製作の様子@

丸挽きで1寸8分の厚さに製材されたシイ材に、櫓のウデの墨付けをします。ウデの木型は松岡さんから譲り受けたもの。


櫓の製作の様子A

櫓のハの材に墨付けするときの基準とするため、断面を型紙にしたもの。荒木さんが準備しました。櫓のハの厚みは、手元(ウデ側)からハ先に向かい2寸から6分へ薄くなり、側面に向かっても水を切るよう流線形に薄くなります。また、断面は上下非対称で、上面より下面が丸みのある形になっています。


櫓の製作の様子B
長さ10尺のハの材に墨糸を張り、的確に墨付けをしていきます。


櫓の製作の様子C
引いた墨に合わせて電気カンナで削り出し、また墨付けをし、削るという過程を繰り返し、形をつくっていきます。形がほぼできたら、最後は仕上げカンナで表面を整えます。


櫓の製作の様子D
イレコを取り付けます。割りクサビホゾで、ずれないようはめ込みます。


櫓の製作の様子E
イレコにログイが収まる穴をあけます。大きさと深さの調整が意外に難しい。


櫓の製作の様子F
ハとウデの接合前に、櫓の曲がりを調整します。への字に曲がった上下だけでなく、実は左右も少し角度がついています。


櫓の製作の様子G
ウデとハの接合は、2カ所をボルト締めで固定。昔は欠き込んでホゾでとめ、銅線で巻くなどしました。


櫓の製作の様子H
ツクも取り付け、完成。
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